AI活用評価がトークン消費量ベースだと何が起きる? 無駄遣いが高評価になる倒錯

君もトークンを無駄に消費して社内評価を高めよう !

X(旧Twitter)を眺めていると、時折目を疑うようなポストに出会う。最近見かけたのは、「社員のAI活用度を測るため、APIのトークン消費量をプラス評価の指標にしている経営者がいる」というものだった。

AIを導入する本来の目的は、業務の効率化や自動化、つまり「少ないリソースで大きな成果を出す」ことにあるはずだ。しかし、トークン消費量(=企業が支払う利用コスト)を評価基準にしてしまうと、この前提が見事に崩壊する。無駄にコストをかければかけるほど「AIを使いこなしている優秀な社員」として評価される、という全く新しいパラダイムの誕生である。

ChatGPTでの無駄なコンテキスト付与(インプットの最大化)のプロンプト

単純な業務メールの添削を依頼する際にも、過去数年分の無関係なメール履歴や、会社の理念、果ては昨日の夕飯のレシピまでをプロンプトに盛り込む。「これらの文脈を深く理解した上で、この『了解しました』という一言をリライトして」と指示すれば、インプット側のトークンを容易に跳ね上げることができる。

Claudeでの限界出力要求(アウトプットの最大化)のプロンプト

一度に処理できるコンテキストウィンドウが広いClaudeには、その長所を逆手に取った要求が有効だ。短いお知らせ文の作成を依頼する際、「想定される読者のペルソナを100通り作成し、それぞれの視点からの感想と批判を500文字ずつ付記して」と指示する。圧倒的な文字数を出力させ、アウトプット側のトークンを限界まで搾り取ることが可能だ。

Codexでの過剰なコードレビュー(文脈の肥大化)のプロンプト

コード生成に特化したCodexに対しては、読み込ませる文脈を無駄に広げるアプローチが効果的だ。数行のCSSやJavaScriptの修正を行いたいだけなのに、WordPressのコアファイル全体や、全く関係のない自作のChrome拡張機能の全ソースコードをコピペして渡す。「すべての依存関係を網羅的に確認するため」というもっともらしい理由を添えれば、実務を装いながら大量のトークンを消費できる。

テクノロジーは確実に進歩している。しかし、それを評価する人間の側の指標がバグっていては、AIもただの高価な遊び道具に成り下がってしまう。

「いかにシンプルで美しいコードを書くか」「いかに的確なプロンプトで最短で答えに辿り着くか」ではなく、「いかに無駄にトークンを消費させる長文を書くか」に知恵を絞る社員の姿は、最先端のテクノロジーを導入した企業が陥る、現代の美しい喜劇と言えるだろう。

なお、このプロンプトを使って何が起きても責任は取りません。